「働き方改革」の一環として予定されている「裁量労働制」適用範囲の拡大。
「裁量労働制」の問題点、ブラック企業が喜ぶそのワケとは。
こんにちは、そら(@15sora30)です。
最近、ニュースで「裁量労働制」という単語をよく耳にします。
「裁量労働制の拡大」は削除されましたね。
「裁量労働制の拡大」を削除へ 首相、「働き方」法案で:朝日新聞デジタル
新たな犠牲者が出ずによかった。
ただ、すでに裁量労働制が適用されている職業もあるので、
今後はその改善が求められると思います。
労働法を勉強したばかりの私にとってこれほどタイムリーな話題はありません。
「裁量労働制」自体は現在も特定の業種・業務に限定されて取り入れられています。
「働き方改革」の中に、その限定範囲を拡大して「裁量労働制」を広く取り入れやすくしようという案が盛り込まれて、
その拡大を推進する根拠として挙げたのが不適切なデータだったため問題になっている、というわけです。
データの何が問題だったのか知りたい方はこちらの記事へどうぞ⇒
裁量労働制の方が労働時間は短いかのような安倍首相の答弁は何が問題なのか(予算委員会に向けた論点整理)(上西充子) – 個人 – Yahoo!ニュース
本記事では
「裁量労働制」の問題点、
ブラック企業が喜ぶそのワケについて簡単にまとめています。
「裁量労働制」とは?ブラックのはじまり?
「裁量労働制」とは「業務の遂行を労働者にゆだねる」制度。
みなし時間が1日8時間の場合、実労働時間が3時間でも10時間でも8時間労働したものとみなされます。
上司 : 「業務Aを今日中に終わらせておいて」
と業務を命令された際、
aさんが短期集中、「3時間で終わらせた」の場合も
bさんが練りに練って、「きっちり8時間で終わった」の場合も
同じ時間(8時間)働いたとみなされる。
同じ1日分の給料が支払われる、という制度。
aさんはbさんよりも3時間も早く帰れる!しかも給料は同じ!、ということになります。
「裁量労働制」最大の魅力
何時間働いても同じ
ということは、
仕事が少ない日、あるいは仕事の早い人は
「労働時間が短くて済みますよ!」
「早く帰ってもいいし、遅く出社してもいいですよ!」
と、なる可能性があります。
こうした労働時間の短縮が最大の魅力!
裁量労働制恐ろしい落とし穴「サービス残業」の無限ループ
「労働者に有利じゃん!採用!採用!」
と食いつきたいところではありますが、
上司 : 「業務A、B、Cを今日中で」
と命令されたらどうですか?
1日8時間では終わらないかもしれません。
これが落とし穴。
その場合、残業でなんとか終わらせることになると思います。
残業時間は?
計算されません。
どんなに残業しても残業代はゼロ!
(1日8時間のみなし労働の場合。1日9時間のみなし労働の契約であれば8時間を超える分、つまり1時間分の残業手当が出ますが、それ以上は出ません)
それが常態化してしまったら?
「裁量労働制」のポイントは
「業務遂行の裁量」は労働者にゆだねられますが、
「業務の量」は上司・会社次第。
という点にあります。
恐ろしいことに企業は
定額・労働させ放題!
どれだけ働かせても給料は同じ!
労働者は「労働時間の短縮」どころか「サービス残業」の無限ループで残業地獄の日々を送ることになりかねません。
現行の2種類の「裁量労働制」
前述のとおり「裁量労働制」は全く新しい制度というわけではありません。
こんな職種の人は裁量労働制が適用されうるよ!
というのだけ簡単にご紹介。
専門業務型裁量労働制
引用元 : 労働基準法のあらまし | 東京労働局
「専門業務型裁量労働制」は上記の全19業務に限り、労使協定を締結することで適用可能になります。
システムエンジニアは地獄…
なんていうのはこういった制度による要因もあるわけですね。
業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務として厚生労働省令及び厚生労働大臣告示によって定められた業務の中から、対象となる業務を労使で定め、労働者を実際にその業務に就かせた場合、労使であらかじめ定めた時間働いたものとみなす制度です。
企画業務型裁量労働制
引用元 : 労働基準法のあらまし | 東京労働局
「企画業務型裁量労働制」は上記の基準を満たした一部の事業場にのみ許されるものとなっています。
『裁量労働制』新たな適用対象は…
さて、「働き方改革」によって新たに「裁量労働制」の適用対象となる業務はなんなのか。
「お願いだから自分とは関係のない業務であってくれ 」
と、ここまで記事を読んでくださった方は思っているでしょう。
答えはズバリ…
営業職!
「営業」といっても様々な形態があります。
今回対象予定の営業とは「法人相手の営業業務に携わる人」
端的に言ってしまうと法人相手に、企画・立案・調査・分析が関わる営業職にも「裁量労働制」を認めようという内容になっています。
おわりに:裁量労働制で残業地獄!?ストップ過労死
「裁量労働制」とは
- 労働時間短縮の可能性を含む制度(理想)
- 定額・労働させ放題(現実)
- 新たなターゲットは営業職(法人)
とはいえ「裁量労働制」に問題があるのではなく、
使用者側の不適切な制度運用に問題があるのです。
理想を掲げて適用範囲拡大よりも、
現実に目をやり、適切な制度運用のための法整備を考えたほうがいいのではないでしょうか。
幸いにも私は適用範囲外の職種ですが、「まじめな人が損する」世の中は勘弁願いたいものです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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