雨のなまえ / 窪美澄
こんばんは、soraです。
【読書記録】
はじめましての方は注意書きをどうぞ。
前回は心から笑えるエッセイを読んだで、うってかわって鬱屈とする気分になりそうな作品を読みました。
本日の読書記録、
『雨のなまえ』窪美澄
雨のなまえ (光文社文庫)
窪美澄作品はよるのふくらみ (新潮文庫)に続き2作目となります。
『よるのふくらみ』は大人による大人のための大人の恋愛小説といった感じで、今回の雨のなまえ (光文社文庫)も大人の恋愛もの。
ただ、きれいな恋愛ものではありません。
あらすじ
女は小さな声で、マリモ、と言った―。家具ショップで働き、妊娠中の妻と何不自由のない生活を送る悠太郎。
ある日店に訪れた女性客と二度目に会った時、彼は関係を持ち、その名を知る。
妻の出産が迫るほど、現実から逃げるように、マリモとの情事に溺れていくが…。(「雨のなまえ」)
答えのない「現代」を生きることの困難と希望。降りそそぐ雨のように心を穿つ五編の短編集。
内容(「BOOK」データベースより)
ひとつの物語が50ページ前後で非常に読みやすいですが、最後の1話以外は鬱屈した気分にとらわれるかもしれません。
各主人公が"救われた"と感じる方もいれば"救われない"と感じる方もいるかもしれません。
出口はないようです。
また、私のような20代前半が読むには"まだはやいのか?"と感じた部分もありましたがそれはそれでアリだったんだなとも思いました。
答えのない5つの物語
雨のなまえ 〜出産を間近に控えた妻に怯える男〜
表題にもなっている『雨のなまえ』は終始鬱屈した気分にとらわれました。
それと、難しい。
言葉が難しいのではなく、わかりやすい心情描写がなく、周囲の環境、風景、主人公の行動などで感情やテーマが描かれているのであまり小説を読まれない方にはおすすめできないかも。
ザ・文学
といった感じでした。
(それに比べ、この表題作以外は非常にわかりやすく、読みやすいです。)
すごく言いたいけど言えない、薦めたいワケがあります。
...読んでください!
記録的短時間大雨情報 〜パート先で働く大学生に恋する中年の主婦〜
これは私のような20代、それも男とあっては感情移入は難しいですが、世の中の女性の多くが共感できるなら、やはり女性も男性と根本的には同じなのかなという考えに落ち着きます。
そうであるならば、私は現代の女性、妻、奥さん、母親に対するかなり的はずれな見解をもっていたことになります。
自分が結婚したら奥さんのことを"こう扱わなくてはいけない"みたいなことを教わりました。
男性は読むことをおすすめします。
雷放電 〜美しい女と二人だけの世界にひたる男〜
こちらは少し残念だなという印象を持ってしまった。
特にマンガなんかをよく読む人は同じ感想を持ってしまうかもしれません。
ゆきひら 〜心に傷を抱えながら、いじめ問題にあたる中学教師〜
妻に秘密の過去を持つ男性教師。
自身の罪悪感と葛藤と闘いながらクラスのいじめに向き合う。
思春期の生徒が持つ不安定さと男の心情の不安定さが妙にリンクしていて、それなのに最後は著者に突き放されたかのように感じました。
あたたかい雨の降水過程 〜仕事と子育てに追われるシングルマザー〜
4編続いた鬱屈した気分を最後に拭ってくれる著者の優しさが感じれられる1編。
離婚し、幼い息子と2人で暮らしていきたいと願う主人公。
しかし夫はDV夫でも不倫をしているわけでもない。
それなのになぜ離れて暮らしたいと思うのか...。
全体を通して
「現代」を生きることの困難と希望。
とありますが、まさにそのとおりだと思います。
冒頭で私が"まだ早いかも"と感じた、と書いたのは私自身まだ人生経験が足りず、これほど共感しがたい心情に遭遇したことがなく、人間の本能が持つ不可解な側面に置いてきぼりをくらったからです。
それが理解できるのはまだ20〜30年先かな、と思いました。
でも、出来ることならば理解したくないという思いもあります。
雨のなまえ (光文社文庫)
よるのふくらみ (新潮文庫)
むずかしそうなのはちょっと...という方はよるのふくらみ (新潮文庫)でしたら難しく感じることなく、楽しんで読めると思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
興味を持っていただけたら幸いです。
前回の読書記録。